2021年5月27日(木)、Findyが主催するエンジニア向けイベント「フリーランスエンジニア会議〜フロントエンド開発案件の最新トレンド編」がオンライン上にて開催されました。
使いやすく魅力的なアプリケーションやWebサイトのUIを実装できるフロントエンドエンジニアのニーズは、業界を問わず増加傾向にあります。 しかし、サーバーサイドと比較すると業務委託の案件数においてはまだまだ数としては少なく見えます。 サーバーレスなどの普及で、主にスタートアップ企業からのフロントエンド完結型の開発が増えてくると予想されます。
今回は、あしたのチームでフロントエンドのテックリードを担当し、フリーランスエンジニア経験もある塩野様と、デザイン・フロントエンド開発領域においてご活躍されているフリーランスエンジニア山根様にご登壇いただき、今後のフロントエンド開発における業務委託案件の推移と傾向を語っていただきました。その内容を、前編と後編の二部構成でお届けします。
前編では、フロントエンド周りを中心に、現在のトレンドや正社員とフリーランスの違い、今後フロントエンドエンジニアに必要となるものなど、トピックごとに伺っていきます。
フリーランス歴9年目。文字を聴くテキストプレイヤー https://nine.app や、ツリー状に書くドキュメントサービス https://tree.md (Product Huntデイリー2位)を運営。委託ではNOWROOM (https://nowroom.jp) のiOS/Androidアプリ開発担当。1人法人フリーランスのデザイナー兼エンジニア。
独学からSIerを数年経験した後、フルリモートで正社員としてフロントエンド開発を行いながら余暇をフリーランスとして活動。 現在もあしたのチームでフロントエンドのリード役をつとめつつ、余暇を利用して個人プロダクトの開発を行っています。
ファインディ株式会社 ユーザーサクセスエバンジェリスト。株式会社ドリコムでIP系ゲームアプリの開発ディレクターを経験後、2018年6月にジョイン。 Findy Freelanceの事業立ち上げ〜グロースを経て、現在FindyFreelance部門のTLを担当。
ーー今回、モデレーターを務めるFindyの田頭と申します。本日はどうぞよろしくお願いします。まず初めにイベントを皆様と一緒に盛り上げるためのウォーミングアップとして最近開発で使っているJavaScriptのフレームワークをチャット欄にご投稿いただければと思います。登壇者のお二人はいかがでしょうか。山根さんはやはりNext.jsでしょうか?
山根:
そうですね。ちょっと前まではVue.jsだったんですけども、最近自分の周りではReactの話しか聞かないようになってきたなと思います。あと最近出てきている仮想通貨系はAngularをよく聞くなって感じがしてます。
ーー塩野さんはNext.jsとご回答いただきましたが。
塩野:
私も最近はNext.jsを使っていますね。周りでもNext.jsの話ばかり聞く印象がありますね。
ーーありがとうございます。続いて、登壇者2名の方に自己紹介をしていただきます。最初に山根さんからお願いします。
山根:
合同会社VALLISの山根です。フリーランス歴は10年ぐらいで、自営業が7年、法人化して3年ぐらいになります。主に企業さんからの受託開発をメインとしてやっていて、時間が空いた時に自社サービス開発をやっています。自社サービス開発は、文字を聴くテキストプレイヤー「nine」とツリー状に書いていくドキュメントサービスの「Tree」の2つのサービスを運営しています。業務委託は、初期費用0円で家具家電付きの部屋を短期賃貸できる「NOW ROOM」さんのアプリ開発を行っています。iOSとAndroidのアプリ開発を担当しています。
ーーありがとうございます。僕も「Tree」を使っていますが、めちゃくちゃ書きやすく思考の整理にも役立ちますので皆様是非ご活用いただければと思います。それでは続いて塩野様お願いします。
塩野:
私は「あしたのチーム」という会社でフロントエンドのテックリードをしております。大学の専攻がプログラミングを学ぶ学部ではなかったこともあり、独学でプログラミングを始めました。SIerを何件か経験した後に正社員としてフロントエンド開発を行いながら、空いている時間でフリーランスとして活動している生活を5、6年くらい続けております。
塩野:
ちなみに「あしたのクラウド」を簡単にアピールさせて頂きますと、人事評価のHRテック系サービスでして人事評価をオンライン上で行うというサービスです。よろしくお願いします。
ーーありがとうございます。早速一件質問が来ているのでお答えいただければと思います。「仮想通貨系はAngularが多いとのことでしたが何故でしょうか」という質問です。山根さんいかがでしょうか?
山根:
仮想通貨系に限らず金融系も多い気がしますね。僕も触ったことがないのでちょっとはっきりと言えないんですけども、それなりの理由がどこかにあるんだと思います。すみません、歯切れの悪い回答で。
ーーそれでは、パネルディスカッションに移っていきます。まずはフロントエンドの現在のトレンドの技術についてお話を伺えればと思います。山根さんからお答えいただいてもよろしいでしょうか?
山根:
トレンドっていうと、ここ一年くらい特に変化がないなと感じています。強いていうならFlutterの名前を聞くようになってきてますね。フロントもサーバーサイドも全部Dartに振り切る会社も出てきているので、そのあたりはちょっと大きな動きかなと思って見ていました。
ーーありがとうございます。Flutterめちゃめちゃ盛り上がっていますよね。ちなみに最近僕の中だとフロントエンドの移り変わりが激しいイメージだったのでちょっと意外な回答でした。山根さんの中でサービスや開発体制でベストプラクティスはもちろん異なることは前提だと思いますが、ある程度自分がサービス開発に参画することになったら、どのような技術選定にしますか?
山根:
フロントエンドだけで言うと最近Next.jsを使っている会社が多いですよね。情報も増えてきていますし、何か困ったら検索すれば解決するので、そのトレンドに乗っておくといいかなと思っています。
ーー去年TypeScriptなんかも増えてきている印象ですが、React、Next.jsにプラスしてTypeScriptみたいな感じでやられることが多いですか?
山根:
そうですね。普通のJavaScriptを書く機会はほぼ減ったかなくなったかなって感じです。
ーーありがとうございます。続いて塩野さんお願いします。
塩野:
私もFlutterはかなりキテいるなと思っています。キテいる理由としては、Flutter単体でアプリ開発できるだけでなく、Webに移植できたりとかAndroidやiOSもFlutterで書けるからですね。しかも、ネイティブのソースコードにコンパイルされて出力されるところが強みでもあります。
塩野:
あとは、もう一つ私が気になっていることがあります。「Fuchsia」という名前のOSをGoogleがリリースしまして、それもFlutterで書かれているんですよね。なので、OSもFlutterで開発できて、モバイルもWebもFlutterで開発できる時代をGoogleは作ろうとしているんだなあと個人的に思っています。
塩野:
特にFlutterのVer. 2.2を境に、今後かなり世の中に知らしめるような土台が作られてきつつあります。早めにキャッチアップしておいて損はないのかなと思います。
ーーまさかお二人からFlutterというワードが出るとは思わなかったです。
塩野:
どちらかというとネイティブの開発っぽい感じがしますからね。
ーー確かにFlutter for Webも出てきてオールインワンでやっていくみたいなところが増えているなと思います。
山根:
Flutter for WebやReact Native for Webとかも出てきていますよね。ネイティブアプリとWebも一緒に開発していこうみたいな流れは来ていますが、実戦投入できていない現場が多いので今後どうなっていくかが楽しみです。
ーー世の中に浸透させていく上でネックになりそうな点はどこだと思いますか?
山根:
WebサービスをやっているとネックになってくるのがSEO対策ですよね。そのため結局分けたほうがいいという話にはなったことがあります。
ーーなるほど、確かに。
ーーFlutter、確かに人気はあって熱も高まっている感じがあるのですが、やっぱりいきなり採用するのは難しいのか、なかなか数が増えていかないなと思ったりしています。ちなみに山根さんと塩野さんの場合、Flutterなどの新しい技術などをキャッチアップする際、どのようにしていますか?
山根:
僕の場合には作りたいものから出発することが多くて。それをちょっと今風のモダンな技術で作ってみよう、みたいなところから始まりますかね。
ーーこういうところを作りたいという価値提供をしたいから逆算で、ですね。すごいイメージがわきました。塩野さんはいかがでしょうか。
塩野:
そうですね。僕は自分の場合はどちらかと言うと、この製品ではすでにこの技術が使われているので、というところからのスタートが多いんですけど……キャッチアップの件でしたっけ?
ーー初学の言語とか技術みたいなところ、例えばFlutterを学ぶってなった時にまず何を見ていくのかなと。
塩野:
やっぱりちゃんと公式のドキュメントを読むこと、これは当たり前になってきましたよね。日本語がなかったとしても最近はサンプルコードがすごい充実しているので、サンプルコードを元にちょっと動かしてみるとか。まずそういったところからキャッチアップしてくってのは多いですね。無難な回答ですけど。
ーー確かに公式ドキュメントを見にいくことが非常に増えてるなと、面談してても思ったりします。
塩野:
ドキュメントが充実してないとその技術が広まらないってことになってしまうんですね。ドキュメントはすごい大事という世の中の流れになってきたのかなって思いますね。
ーーここで一個、是非触れておきたい質問が来ています。海外のプログラミングスクールの学習者の方なのですが、「日本の React Native の需要はいかがですか」とのこと。先程の山根さんのご回答に重複してしまう部分もあるかなと思うんですけども。
山根:
僕は React Native で今の案件をやっています。フロントエンド、Webで役立っている人もヘルプとして React Native で作って助けてもらえるみたいな……Webもネイティブアプリも全部 Reactでやりたいというところは React Native を採用しているイメージがあります。ただ、なかなか採用も大変なようです。
ーー次のトピックに移らせていただきます。続いてですね、フリーランスのフロントエンドポジションのニーズは今後どうなるかについて伺っていければと思います。まず塩野さんからお願いいたします。
塩野:
フリーランスに限らずという感じになってしまいますが、フロントエンドがやらなければいけないことがどんどん広がっているのをすごく感じています。なので今後どうなるか、ニーズはどうなるかというところですと、間違いなく増えていくと思っております。
塩野:
ただそれがフリーランスとしての案件に今まわって来ているかと言うと……今のところはこういうフロントエンドの人が欲しいという案件はまだまだ少ないように感じています。
案件にまで普及してくるのにはもう少し時間かかりそうです。ただ、実際にもうすでに世の中に落ちている案件ですと、やはり一昔前よりはフロントでやらないといけないことがかなり増えた案件内容が転がってることが多いなとは感じております。なので、フロントエンド ポジションのニーズは今後どうなるかというところですが、これは衰退するのではなくてどんどん広まっていきそう、大きくなっていきそうです。
ーー質問が来ているのですが、「北米ECサイトの開発に関わってショップを見ると、 React が多く使われているようです。そのため、React のフリーランス案件が少し多くなってる傾向がありますが、日本ではどんな感じでしょうか」という質問ですね。海外と日本の比較みたいなところもあるかもしれませんけど。前提としてですが、山根さんは基本的に日本での国内での開発が多いという感じですかね。
山根:
そうですね海外事情は全然わからないです。
ーー最近目立った事業ドメインとか、こういうのに関わることが多いなとかありますか?
山根:
自分はそんなに数を回してないんでちょっとその辺はわかりかねます。多分Findyさんのほうが情報持ってると思います。
ーーありがとうございます。コロナ禍の影響で家で過ごすことが増えて消費機会や可処分 時間も増えてきてるので、そのぶん EC などのニーズが来てるのかなと僕も感じたりします。もう一個質問が来ています。今「キテいる」React Native と Flutter に続き、Ionic はいかがでしょう?
山根:
Ionic もちょいちょい聞くんですけども、まあ並々って感じですかね。Flutterの勢いだけ、この3つのなかだとすごいと思います。
ーーありがとうございます。技術周りについてもあとで質問の時間を設けますので、後ほど回答できればと思います。続いて先程のトピックに戻って、フロントエンドポジションのニーズが今後どうなるか、山根さんはいかがでしょうか?
山根:
直近だとコロナ禍で、今までの業務もDX化とか言われてますよね。システム化していく動きがすごく見えるので、おそらくその分だけ画面の数も比例して増えていくと思うので、我々フロントエンドのポジションのニーズはフリーランス問わず増えていくんだろうなと思っています。フリーランスでいうと社員採用の点でなかなかエンジニアさんが足りてなくていないので、フリーランスにも声がかかっています。ですので、フリーランスとしても大丈夫じゃないかなと思っております。
ーーそれこそDXみたいなところも最近増えてきてますよね。バックエンド側だとデータベース連携とかデータ基盤の統合などのところのニーズが増えてきている印象はあります。フロントエンドだとこういう感じの課題解決が増えてきそうなんじゃないか、みたいなところのイメージはありますか?
山根:
僕はやったことないんですけど、コールセンターとの連携案件はわりと聞きますね。
ーー確かにめちゃくちゃありそうですね。フォーマットが違ったりとか、色々ありそうな感じがしました。
ーーもう一個質問が来ています。こちらは塩野さんに是非。フロントエンドのやらなければならないことが増えてるというキーワードがあったと思いますが、具体的にはどのようなことでしょうか?
塩野:
そうですね。一昔前までは画面フロントエンドの画面実装に関しては、画面内で完結することが多かったと思うんですけども、最近はフロントエンドで……例えば Google の Cloud Firestore、Firebase とかを使ってサーバー側のデータを直接フロントエンドがいじることが増えてきたりしています。そういった場合、フロントエンドがバックエンドのこともちゃんと理解した上でフロントエンドの実装を行わなければならないわけですね。バックエンドも含めてフロントエンドがやりたい、フロントエンドで完結したいというニーズもありますし、サーバーレスフレームワークなどを使うものもあると思うんです。それ以外ですと……ちょっとごめんなさい、パッと出てこなくて大変申し訳ないんですが、フロントエンドはここまでやって欲しいという領域がだんだんと広く、曖昧になって来ているところもありまして、なんと言うんでしょう……。
山根:
あれですよね、フロントエンドがフロントエンドのことだけやっておけばいいっていうのが、終わったって感じですよね。
塩野:
ユーザーが実際に使う接点がフロントエンドになるわけですけれども、デザイン、UIやUX然り、というところになりますよね。そのエンドユーザーが操作やアクションを起こした後に実際に呼び起こされるロジックっていうのが、我々フロントエンドエンジニアが実装する場所になって、それがどのようなロジックでサーバー側に渡っていくのかなども含めて、我々が今までは考えなくて良かったところも含めて……ビジネス的なインパクトが一番大きい部分を実装しなきゃいけなくなったっていうところですね。フロントエンドのやらなければならないことが多くなったという、ちょっと曖昧な言い方をしてしまったんですけども。
ーーありがとうございます。塩野さんのお話にもあったんですけど、バックエンドも含めてフルスタックに開発しているところがあるわけですね。山根さんもフロントエンドとデザインみたいなところを横断的にわたっていくところもあって。確かに最前線でご活躍されてる方って、幅広く……なんでしょう、揺り戻しというのかな、全体観を把握した上でやられているな、というのをすごく感じたりします。
塩野:
フォローありがとうございます。
ーー技術周りに関しては後ほどということにして、ちょっと切り口を変えてみます。フリーランスとか正社員が、それぞれどんな技術やキャリアの志向だとマッチするかなどを伺っていければと思います。本日ご参加いただいている方について正社員の方が6割ぐらいというところもありますので、実際にフリーランスの方がいいのか正社員の方がいいのかってのは結構関心度の高いあのトピックかなと思います。じゃあ始めに山根さんから。こちら、いかがですかね。
山根:
そうですね、多分それぞれ個人が目指したいキャリアによって全然違うのかなと思ってまして……フリーランスだとデメリットとして生活や売上の不安がありますよね。やっぱり不安定になりがちなので。それを踏まえて、それでも色々な会社の案件に飛び込んでみたいとか 時間を自由に使っていろんな技術を勉強したいとか、何かちょっと自由度が高いことをしたい人には向いてるかなって思いますかね。
山根:
正社員、しかもスタートアップで言えば、やっぱり初期から開発に携わって自分でサービスを作っていくという一体感とか、育てていく感じがすごくあると思います。上場すれば夢もありますしね、ストックオプションで。今のワードでピンと来た人は正社員のほうがいいんじゃないかなと思いました。
ーーありがとうございます。山根さんご自身で参画している企業様のエンジニアの方から、ちょっと迷ってるんですよね、とかお悩み相談があったりしますか?
山根:
それはないですね。正社員になりませんかって話はもらいますけど。
ーーこれは僕のお悩み相談みたいになって恐縮なんですが、フリーランスになるか正社員になるべきか、回答をする際にすごく難しい複合的な要因があったりして、難しいなあと感じる時があって……。山根さんのお知り合いの方から「迷ってるんだよね」のような相談が来たら、どういったポイントを訊きますか? この場合だったらフリーランスを勧める、といったポイントはありますか?
山根:
もう自由になりたい、あんまり仕事をしたくないからフリーランスとかなりたい、って言われると、おいおい正社員のほうがよくないかって……。拘束されないと働けない人とかいらっしゃると思うので、そういう人は正社員のほうがいいなって思いますけどね。人によりけりですけどね。
ーー以前お話させてもらったとき、山根さんも早朝からジムに行かれていると聞いて、すごくセルフマネジメントできる方だなあと思いました。そういう方がやっぱりフリーランスに向いてるんだなと印象的でした。では塩野さんにも伺えればと思います。フリーランスと正社員ってところをどちらもやられてきたってところもありますよね。振り返ってみて、こういう要素を持っている方だったらこっちのほうがいいんじゃないかな、などありますでしょうか。
塩野:
私はそうですね、セルフマネジメントをそこまでちゃんとできるタイプではないので……ちゃんとみんなと働く時間というのが、私にとってすごく欲しい、必要なものでした。だから正社員を続けたいなと思ってました。
塩野:
あとは、保険など会社だったからこそ普通にやってくれることの恩恵に授かれる点は正社員の特権だと思います。そのあたりは正社員として働く際に重要視して考えていました。ただ、特にフリーランス目線で考えると、正社員は新規事業に携わる回数が圧倒的に少なくなると思うんですよね。「本当に新規事業をやるぞ」って会社で決めない限りは、新規事業に携われることってそうそうないと思います。新しい技術や新しいビジネスに携わることができる点はフリーランスの特権で、自分も興味のあった部分でした。そのため余暇を利用して、何か案件でお手伝いできることありませんかという形でフリーランスを細々とさせていただいていました。
ーーありがとうございます。今、参加者からのコメントも来てまして、「フリーですがやっぱり案件を選べるのと経費を使えるのが大きいですね」とのことです。新しいもの好きな人の場合は、会社員でいるとすごくフラストレーションが溜まる印象があります。
塩野:
会社でも新しい技術を取り入れることは可能なんですが、プロセスが大事になってきちゃうんですよね。新規事業とかの場合は、みんなで「よし、これをやるぞ」ってなったら選べるんですけど、もし既存のプロダクトで既存の技術があった場合には、その既存の技術を剥がすためにはどうすればいいのかとか……。剥がして新しいものにリプレースした結果、どれだけの恩恵が得られるのか、コストに見合うリプレースになっているのかなど、色々と考えなければいけないことがあって、それを上乗せしてもさらにメリットがある場合に初めて新しい技術を採用できるようになります。正社員であったり、あるいは既存のプロダクトを運用していく場合には、どうしてもそこは生まれてきてしまうので身動き取りづらいのはあるかもしれないですね。
ーー確かに、新規に携わるかどうかはそもそもの会社の事業の方向性なども含めて決まると思うので、そこを主体的にコントロールするのは難しかったりしますよね。
塩野:
そうですね。
ーーハイブリッドなところでマイクロ法人を立ち上げると、正社員の社会保障とフリーランスの自由の両方の旨味を味わえますよね。もしその機会があったら……と思いました。少し補足すると、正社員の場合、比較的短期間で期待された成果を求められたり、技術的な引き出しの豊富さが大事だったり、ですよね。あとはチームビルディングなども含めて仕事が増えたりします。余談なんですが、フリーランスエンジニアだとチームに入ってマネージメントをしてくださいと言われることはほぼないですよね。どちらかと言えば、大きめの技術的な課題を解決して欲しいなどがあったりします。僕のほうから一つ言えることとしては、組織をどのように熟成させていくかを考えたり組織設計に携わっていきたいなどなら、正社員のほうがいいかなと思います。
ーーもう一個質問が来ています。「会社員だと社内で根付いている技術が優先されることがあり、新規の案件であってもなかなか使いたい技術を使えないと感じます。」とのこと。塩野さんはテックリードをされてたりもすると思うので、このあたりどうされているのか、もしよかったらお願いします。
塩野:
新しい技術を取り入れるってことは、それに対する学習コストもついてくるんですよね。ある個人が非常にその技術に対してスキルが高かったとしても、その技術レベルを他の人に布教したり勉強会を開くといったコストも踏まえる必要があります。そこまで全ての面倒を見て、みんなの合意も取れて初めて導入できるので……今までその会社さんがずっと取り扱っている技術を引き剥がして他のものにするのには難しい部分があると思いますね。
塩野:
ただ、その技術がどれだけ素晴らしいのかをみんなに伝えるところ、それをみんなでキャッチアップしていくための準備や勉強会など、そこまでカバーできれば……使いたい技術を導入するところまで持っていくこともできるとは思いますね。
ーーありがとうございます。明日のチームさんなどですと、皆さんがフルリモートでやられていたりしますよね。働き方の自由にも取り組みつつ、しっかりと開発のプロセス決定をされているなっていう感じがしました。
ーー次はトピックとしては最後のものです。これまでのトピックは現在に注目した時間軸でしたが、最後のトピックは未来の時間軸です。フロントエンドには今後どんなスキルが必要になりそうか。こちらに関して、塩野さんから是非ご回答いただければと思います。
塩野:
ちょっとここではフリーランス向けと正社員向けで別々に分けて考えてみます。私は正社員を中心にして、空いてる時間をフリーランスという形でやっていますが、正社員の場合には他にもできるメンバーがいるはずですよね。なので、自分がすべてをできる必要はないっていうところはありますよね。ここの部分が得意ですっていうところがちゃんとしていて、つまりしっかりとした技術力があればよいかなと。そうすれば、そこの部分はその人に、それ以外の部分は他の得意な人がやればいいと役割分担ができるイメージがあります。ですので、自分の興味のある範囲を中心に、得意な部分を増やしていけばよい、と。例えば、私はフロントエンドのUIのなかでも、どちらかと言うとHTMLとかのマークアップ入りの方が得意だからこの部分を頑張っていこう、など方向性を定めたりとかできると思います。
塩野:
それに対してフリーランスは、場合によっては新規事業などゼロベースから作らなきゃいけない案件があったりします。そしてゼロベースから作る場合、全体がある程度できなきゃいけないという大前提もあったりします。正社員の場合は全部できる必要はないんですけど、フリーランスは時によっては全部できる必要があるんですよね。ですので、今後どんなスキルが必要になりそうかという点では……フリーランスは基本的に一通りやらされればできるようになるべき、ということですかね。つまり新しいスキルが必要になったら、学びながらでもすぐにできるようになるという瞬発力みたいなものが必要だと思っています。何か知らなかったことやできないことがあった時、それを1、2週間以内にできるようになってしまうような瞬発力。それさえあればどんな技術が今後必要になってきたとしても、案件の中で巻き返すことができたりします。あとは自分が既にできているところをより早く行うことで、残った時間をできなかった部分の学習に割り当てるなどの調整もできますよね。
塩野:
今後必要なスキルの具体的な名前が全く出てこないのが申し訳ないですが、必要になったスキルをその場で吸収していくスキルが、フリーランスには本当に必要かなと思います。正社員の方はそこまで急ぐ必要はなくて、本当に必要としているものだけをじっくりと腰を据えてやっていくことが一番今後のためになるのかなと思っています。
ーーまさに仰る通りだなと思いました。フリーランスの場合は基本的には何ヶ月単位の契約などもありますので、なるべく早いタイミングで成果を出すなども非常に重要になってくるかなと思います。今自分がどちらの方向性を求めてるのか、軸のようなものを持っておく必要があると強く感じました。今、塩野さんからご回答いただいたことについて、みなさんからこんなに拍手マーク(パチパチ)がきています。では山根さん、いかがでしょうか?
山根:
そうですね。今いろんな企業が同類のサービスを出し始めていて、どんどん競争が激しくなっているのを感じます。その中でもフロントエンドとしてどんなスキルが求められてきそうかなって言うと、やっぱり他社よりもデザイン性が良いデザインを実装できたり、使い心地を良くする部分は多分フロントエンドの仕事だと思うので、使い心地も考えられた実装ができるようになるスキルとかが必要になってきそうかなと。その辺り、今いろんな案件で注力してやらさせていただいていますが、その辺りをちゃんとやるとお客さんからもすごい 高評価いただいたりしてるので、そういうスキルがあるといいなと思いました。
ーーありがとうございます。皆様からも「使い心地確かに大事ですね」とコメントが来ています。まさにデザインに沿った実装であったりとか、使い心地みたいなところって、山根さんがめちゃくちゃすごいな、素敵だなって思うところがあったりします。フリーランスの場合って、プロダクト開発に関わる場合に必ずしも自分がターゲットユーザーじゃないケース、もしくは自分があまり興味のないような事業領域のプロダクトもあったりすると思います。そういった場合にどのように仮想ターゲットやユーザーをイメージして使いやすさを実現していくのかなど、あったりされますか?
山根:
ペルソナと言われるターゲット像に一回なりきってみるとか、そういう気持ちで一回触ってみるというのは、最初に入った時にはやったりしますね。
ーー僕は前職でゲームの開発や開発ディレクションをしていたので、非常に感じるところでした。運営側の目線みたいなところとユーザーの視点みたいなところを、コードを書いてる時とか実際に触って検証する時などに、頭の切り替えがすごく難しいと感じることがあって……山根さんは新しいプロジェクトに取り組む時、どのように上手くスイッチを切り替えるなどありますか?
山根:そうですね……その文化にできるだけ馴染もうとはしますかね。その時、例えばゲームの場合、自分がゲームに興味なくても、そのゲーム界隈で使われてる言葉やコンテクストがいっぱいあると思います。そういうのにちょっとずつ慣れ親しんでいって、自分もユーザーに寄っていくことは心がけてます。
ーーお二人とも、難しい質問だったんですけれどしっかりご回答いただきありがとうございます。
後編ではいただいた質問に回答しています!
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